グループ会社の車買取アプリをApp Storeで公開した話|エムネット公式アプリを18名の会社が内製した開発記(Android版は準備中)

このたび、みかもグループの車買取専門店「エムネット」の公式アプリを、App Store(iOS版)で公開しました。設計・開発・ストア申請・運用まで、すべてみかもデジタル(社員18名の株式会社みかものDX部門)の内製です。Android版は現在準備中で、公開でき次第あらためて発信します。

この記事は、アプリの宣伝ではありません。「地方の中小企業が、外注に頼らずに自社のアプリを作るとは、どういうことか」という技術的・経営的な話を、同じように地方でDXを進めたい企業さまに向けて公開します。技術スタック、機能設計の判断、App Store審査の実務、社内運用の設計、そしてコスト感——自分たちの実体験の範囲で、率直に書きます。

みかもデジタルは「アプリ開発10万円で作れます」という発信もしてきました。今回のエムネットアプリは、その具体的な実例としてお読みください。

なぜ、地方の18名の会社がアプリを内製するのか

「外注に頼まない理由」ではなく「内製でしか出せない価値」

まず大前提として、アプリ開発は外注しても十分に回せます。徳島県内にも全国にも、良いアプリ開発会社はたくさんあります。それでもみかもデジタルが内製を選んだのは、「外注では出せない3つの価値」を経営的に重視したためです。

  1. 現場のニーズを正しく翻訳する速度——エムネットの査定士・店舗スタッフと毎日会話している人間が、そのままアプリ設計に入る。要件定義書を書いて渡す必要がありません。選択肢の粒度やUIの表現も、肌感覚が議論なしで設計に反映されます。
  2. リリース後の改善速度——お客さまからのご要望やバグ報告が来たとき、内製であれば現場と開発が直結しているため、外注を介すよりも意思決定から反映までの距離が短い。アプリはリリースして終わりではなく、リリース後の運用が本番です。
  3. 次のアプリへの資産化——エムネットで得た知見(React Native+Expoの型、ストア申請のノウハウ、アイコン・スクリーンショットの作法)は、次のSOUP・みかも喫茶・レンタカーのアプリで再利用できます。外注はプロジェクト単位でゼロに戻ります。

「地方だから内製できない」は本当か

東京の大手IT企業と違って、地方の中小企業には専業エンジニアがそろっていない、というのは事実です。みかもデジタルも例外ではありません。社員18名のうち、専業のエンジニアは1人もいません。それでも内製ができているのは、次の3点が揃っているからです。

  • Claude/GPT/CursorなどのAIツールを業務時間内で自由に使える環境——コード生成・デバッグ・ドキュメント化を大幅に時短。
  • React Native+Expoのようなモダンで学習コストの低いフレームワーク——iOS/Androidを1つのコードベースで書ける。
  • 経営層(代表・金村盟)がデジタル投資に振り切っている——「失敗してもいいから社内で経験値を貯めろ」という社内許可が、最終的には一番大きい。

技術スタック——React Native+Expoを選んだ理由

全体構成

レイヤー 採用技術
アプリフレームワーク React Native + Expo(Managed Workflow)
言語 TypeScript
UI 標準コンポーネント+カスタム(デザインシステムは最小限)
ビルド/配信 EAS Build(Expoのクラウドビルド)
ストア提出 EAS Submit(App Store Connectへの自動提出)
状態管理 React hooks のみ(Redux/Zustandなどは使わず)
外部連携 LINE公式アカウント連携(URLスキーム)
アナリティクス なし(第1弾はアプリ内に埋め込まず、ストア側の数字と問い合わせ数で評価)

なぜReact Native+Expoにしたのか

候補としては、Flutter/SwiftUI+Kotlin(ネイティブ個別)/React Native(裸)/React Native+Expoの4つを検討しました。決め手は3つです。

  1. 1つのコードベースでiOS/Android両対応を将来的に見据えられる——今回はまずApp Storeで公開しましたが、同じコードベースからAndroid版も順次リリースする前提です。社員18名の会社で、iOS用とAndroid用の2コードベースを別々にメンテする余力はありません。
  2. TypeScript資産の再利用——みかもグループのWebサイト群(mikamo-group.co.jp/soup.tokushima.jp/mikamokissa.com/m-net.shopなど)はTypeScriptを多用しており、型定義・関数・定数をWeb/アプリで共有しやすい。
  3. Expoのクラウドビルド(EAS Build)——ローカルにXcodeをフル整備しなくても、クラウド側でビルド・署名・ストア提出までできる。これがなければ、社内にmacOS専用マシンを用意し続けるコストが重荷になるはずでした。

第1弾の主要機能

エムネットアプリ(iOS版)の主要機能は、次の3つに絞っています。

  • かんたん自動査定:車種・年式・走行距離・状態を選ぶだけで、概算買取額を算出
  • LINE査定:ワンタップで公式LINEにURLスキームで遷移
  • 出張査定予約:日時・エリアを選択して、エムネットの受付フォームに連携

「シンプルすぎない?」と思うかもしれません。そこが大事な設計判断で、次の章で詳しく書きます。

機能設計——「入れない勇気」が品質を決める

ユーザー登録を“しない”

最初の設計会議で議論になったのは、「ユーザー登録機能を入れるかどうか」でした。通常、アプリといえばサインアップ・ログイン・マイページ・通知許諾、とひととおり実装するのが業界標準です。

結論として、ユーザー登録機能は入れないという決定をしました。理由は次のとおりです。

  • エムネットの買取は「生涯1〜2回」のイベントで、アプリを何度も開くサービスではない
  • ユーザー登録を挟むと、概算査定までの離脱率が上がる
  • 個人情報をアプリ側で保持するほど、プライバシーポリシーと情報セキュリティ対応の工数が増える
  • 本気で査定してほしい方は、最終的にLINE登録または来店するので、そこで本人確認すれば十分

「機能を足すほど価値が上がる」という思い込みを、内製チームでは早めに壊せます。外注では「1機能追加でいくら」という見積設計上、機能が増える方向に引っ張られがちですが、内製ならゼロコストで「入れない」が選べる。これも内製の価値の一つです。

通知もアプリ内アナリティクスも、第1弾では入れない

同じ理屈で、プッシュ通知・アプリ内アナリティクス(Firebase/Amplitudeなど)も第1弾では入れていません。

  • 通知は「押し売り感」がお客様に伝わりやすく、信頼を損なうリスクが高い
  • アナリティクスは、入れた瞬間から個人情報保護の説明義務・GDPR相当の配慮が生じる
  • アプリ改善の指標としては、App Store Connect/Google Play Consoleの標準指標と、LINE登録数/実来店数で十分追える

どこまで入れないかで品質が決まる」——今回のアプリ開発で、チーム全員が共有した設計思想です。

ストア申請の実務——App Storeでまずリリースする

アプリをリリースするとき、多くの企業が詰まるのがストア審査です。今回はまずApp Store(iOS版)で無事に公開できたので、分かった範囲のノウハウを共有します(Android版はこれから準備)。

iOS(App Store Connect)

項目 ポイント
アカウント Apple Developer Program(年間$99)。個人でも法人でも登録可
法人登録の準備 法人アカウントの場合、D-U-N-S番号の取得が必要になる場面がある。事前に把握しておくと段取りがスムーズ
プライバシーラベル App Store Connect上で、収集するデータ/共有するデータを正確に宣言する。今回は「収集しない」として申請
スクリーンショット iPhoneの複数サイズ+iPadサイズを用意。ストアで見られる「第一印象」を決める
審査対応 アプリの機能・動線が審査員に伝わるよう、アプリ名・説明文・プレビュー動画で過不足なく説明する

審査での具体的な指摘内容や期間は、申請するアプリの性質や時期によって変わります。詳細は後日、別記事で開発中のAndroid版リリース時にあらためて振り返る予定です。

Android(Google Play Console)は現在準備中

Android版は、App Storeでの運用で得た知見を反映してから公開する予定です。Google Play Developer アカウント(初回$25・買い切り)の取得、法人の身分証明書提出、コンテンツレーティング(IARC)、データセーフティの宣言——iOS側と似ている項目もあれば、Android独自の対応項目もあります。Androidのリリースが完了した後に、その実体験をまとめて発信します。

スクリーンショット・アイコンの作法

意外と工数がかかるのが、ストア掲載用のスクリーンショットとアプリアイコンです。1枚の画面キャプチャに、キャッチコピーをかぶせた「編集スクリーンショット」が、ストアのクリック率を左右します。みかもデジタルでは、これらの画像生成もPillow(Python)で半自動化しました。編集スクリーンショットの生成スクリプトは、次のアプリ(SOUP/みかも喫茶)でそのまま流用できます。

社内運用——「誰が何を見る」を決めておく

リリース後に失敗しがちなのが、社内運用の不在です。アプリをリリースして「終わった」と思った瞬間に、お客さまからの不具合報告が滞り、レビューで低評価が積み上がる。このパターンを避けるために、内製チームでは次の役割を明確にしました。

担当 見る対象 頻度
みかもデジタル開発担当 App Store Connectのクラッシュレポート・不具合報告 毎日
みかもデジタル運用担当 App Storeのユーザーレビュー 毎日/低評価が出たら即日対応
エムネット店舗 LINE査定の新規登録と返信 営業日中はリアルタイム
経営層(金村代表) ダウンロード数・LINE新規登録数・来店コンバージョン 週次

どの指標を、誰が、どの頻度で見るか。これを決めておかないと、内製であろうと外注であろうと、アプリは「リリース直後が最高品質」のまま劣化します。Android版を公開した後は、Google Play Console側も同じ枠組みで見る予定です。

コスト内訳——外部への支払いは最小限

「みかもデジタルは10万円でアプリを作ると言っている。本当か?」という質問をよくいただきます。今回のエムネットアプリ(iOS版)で、社外に支払っている費用を正直に整理します。

項目 金額感 備考
Apple Developer Program 年$99(為替で変動) App Storeへの公開に必須
Google Play Developer 初回$25(買い切り) Android版公開時に発生(未公開時点では未計上)
EAS Build(Expoのクラウドビルド) 無料枠内で運用 ビルド頻度が上がれば有料プランを検討
開発ツール(Claude Code/Cursor等) 既存契約内で吸収 みかもデジタル全体で既に契約
Webサーバ・DB 使用していない アプリ内完結+LINE遷移のみ
人件費(外部への支払いではない) ゼロ 社員が通常業務の一部として担当

つまり、外部への実支払いは、Apple Developer Program の年会費($99)を中心とした最小限で運用できています。「10万円で作れます」というみかもデジタルの発信は、外注に頼まないことで実現している現実的な数字です。

もちろん、社員の時間を「ゼロコスト」と見なすかどうかには議論の余地があります。ただし、アプリ開発を外注に丸ごと頼めば、ストア申請・運用を含めて数百万円規模になるのが一般的です。その金額を会社の外に出さずに、内製で得られるスピード・学び・次プロジェクトへの転用を選べることは、地方企業にとって大きな意味があります。

地方企業がアプリを内製するための5ステップ

ここまでの流れを、他社さまが再現できる形に整理します。

  1. ユースケースを1つに絞る——アプリで解決したい顧客課題を1つに絞る。複数入れるとリリースまで到達できない。
  2. React Native+Expoをベースに選ぶ——iOS/Androidの両対応を、1コードベースで。
  3. ユーザー登録・通知・アナリティクスを“第1弾では入れない”選択肢を検討する——機能を引き算する勇気が品質を決める。
  4. ストアアカウントの本人確認を早めに始める——Apple・Googleともに法人確認に数週間かかるため、開発と並行して進める。
  5. リリース後の役割分担を決めてからリリースする——誰がクラッシュレポートを見て、誰がレビューに返信し、誰が来店コンバージョンを追うか。

よくあるご質問

Q. うちの会社でもアプリを作りたい。みかもデジタルに相談できますか?

A. 可能です。ただし、みかもデジタルは現時点でみかもグループの内製を優先しており、外部への受託開発は限定的にしかお受けしていません。徳島県内の地方企業さまで、ご一緒させていただけそうな方には、まず「相談」ベースからお話しします。ご相談はmikamo-digital.jpからどうぞ。

Q. React Native+Expoの学習コストはどのくらい?

A. TypeScript/Reactの経験がある方であれば、2〜4週間で最初のアプリを出せるレベルに到達します。Web制作の経験しかない方でも、ClaudeやCursorなどのAIツールを組み合わせれば、1〜2ヶ月で第1弾アプリのリリースは可能です。ゼロから始めるよりも、既存のWebサイト運用経験をアプリに延長する方が、習得が早いと感じています。

Q. 外注とのハイブリッドは現実的ですか?

A. 現実的です。「設計と運用は社内、実装の一部を外部に」という分担はよく成立します。みかもデジタルでも、デザインのリファインやアイコンの制作は外部のデザイナーに相談しています。全部を内製にしなくても、「現場のニーズを翻訳する人が社内にいる」状態が守れていれば、内製の価値はほぼ確保できます。

Q. App Store審査の具体的なノウハウはありますか?

A. 今回、App Storeでの公開は無事に完了しました。申請するアプリの性質や時期によって指摘されやすい観点は変わるため、ここで細かく断言はしません。ポイントとしては、(1)アプリ名・説明文・プレビュー動画でアプリの動線を過不足なく説明する、(2)プライバシーラベルを正確に申告する、(3)スクリーンショットで「実際に使う画面」を伝えるという基本を押さえることが重要だと感じました。Android版公開後にあらためて、Google Play Console側のノウハウを発信する予定です。

Q. Android版はいつ公開されますか?

A. 現在準備中です。iOS版と同じReact Native+Expoのコードベースから、Google Play向けのビルド・申請作業を進めています。公開時期が確定し次第、エムネット公式サイトおよびみかもデジタルから発信します。

Q. 次に作る予定のアプリはありますか?

A. ロードマップとしては、SOUPのコーティング予約アプリみかも喫茶のドッグラン予約アプリカースタレンタカーの貸出予約アプリを検討しています。どれもエムネットと同じ「React Native+Expo」の土台を再利用する予定で、2本目以降の開発期間は大幅に短縮できる見込みです。

地方のDXを、自分たちの手で

エムネットアプリのリリースは、みかもグループの「7サイト、AI、アプリ。全部、自前。」という取り組みの、次のマイルストーンです。社員18名の会社が、外注ゼロで自社アプリをApp Storeに公開できた。Android版は続いて準備中です。この事実そのものが、徳島の、地方の、あるいは全国の中小企業さまに、「うちでもできるかもしれない」と感じていただけるきっかけになれば、みかもデジタルとしてはこれ以上の喜びはありません。

アプリの使用感・ご意見は、エムネット公式LINE(https://lin.ee/LTfMCJI)から直接お寄せください。社内のみかもデジタルが、その声を次のバージョンに反映します。

地方企業のWebサイト・アプリ・AI活用について、もっと詳しく知りたい方は、以下の関連記事もあわせてお読みください。

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みかもデジタル|株式会社みかも DX部門
徳島県三好郡東みよし町
https://mikamo-digital.jp/

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